三井住友DSアセットマネジメント株式会社が運用する三井住友DS日本バリュー株ファンド(愛称:黒潮)は、バリュー株(※1)に投資するアクティブ運用(※2)のファンドです。
当ファンドは独自の判断基準でバリュー株を選別。長期的にTOPIX(東証株価指数 ※3)配当込みを上回る投資成果を目指しています。
今回、三井住友DS日本バリュー株ファンドのファンドマネージャーである部奈和洋さんに取材することができました。
独自の投資判断基準や同ファンドへの想いに迫ります。
当記事を部奈和洋さん、三井住友DS日本バリュー株ファンドとの出会いと捉え、投資の知識を深めるために、ぜひお読みください。
部奈和洋さん
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
運用部 シニアファンドマネージャー
2006年大和住銀投信投資顧問(現 三井住友DSアセットマネジメント)入社。国内株式の市場分析を行うストラテジストを経て、2011年より運用部バリュー+αグループのファンドマネージャー。三井住友DSアセットマネジメントが強みとする日本バリュー株運用に加え、PBR-ROEモデルを活用した独自の分析やAIを駆使したスクリーニング、企業との対話を重視した徹底的なリサーチに強み。大阪府出身。
1. こだわりのバリュー株運用- “変化する企業”に注目する「黒潮」の投資戦略
本日は、三井住友DS日本バリュー株ファンド(愛称:黒潮)のファンドマネージャー、部奈さんにインタビューさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
早速ですが、部奈さんのチームが運用されている「黒潮」ですが、どのようなファンドなのか、特徴を教えていただけますか?
はい。三井住友DS日本バリュー株ファンド(愛称:黒潮)は、その名の通りバリュー株に投資するファンドです。
一般的にバリュー株への投資では、PER(株価収益率 ※4)やPBR(株価純資産倍率 ※5)といった指標から割安な銘柄を選ぶことが一般的です。
しかし、私たちの場合は、ROEから適正なPBRを考える独自の割安性判断に加えて、企業の「変化」に着目しています。
「変化」ですか?
はい。企業を変えていくことは大変ですが、そのぶん価値があり、変化できた企業は評価されると考えています。
特に変化する企業を見るうえで、ROE(自己資本利益率 ※6)が向上していくような変化を起こす企業に注目しています。
ROEが上がっている会社=変化している会社、という認識で良いでしょうか?
そうですね。ROEは、企業のビジネスモデルに大きく左右されます。
ROEを向上させるには、資本を効率的に活用し、収益性を高める必要があります。
ROEは、意識して経営しないと、なかなか向上させることはできません。
ROEの水準について、具体的な数値目標などはありますか?
数値目標というよりは、ROEの水準に応じて適正なPBRがあると考えています。
例えば、「ROEがこれくらいであればPBRは1倍が適正だよね」といった具合です。
つまり、ROEに対するPBRの数値が軸になっているのですね。
その通りです。ROEとPBRの関係性を見て、ROEに対するPBRがどれくらい割安かを見極め、判断しています。
ROEが高い水準で維持できるのであれば、高いPBRであっても良いと考えています。
ROEが高いということは、株主から預かった資本を有効に活用できているということです。
PBRは純資産(※7)に対するバリュエーションですから、資本を有効活用できている会社は高く評価しましょうということです。
2. 変化する企業の見つけ方 – AIの活用と企業訪問を重視
変化している企業について教えてください。どういった企業に注目されていますか?
収益性と企業価値の関係に着目し、既存事業の収益性改善によって企業価値の見直しが期待される銘柄は魅力的だと思います。
なるほど。変化しようとしている企業はどのように見つけているのでしょうか?
変化している企業を見つけるために、様々な情報源を活用していますが、最近ではAI(人口知能)を使って、企業を抽出する仕組みを構築しました。
AIを活用されているのですね!
はい。AIを使って企業のIR(投資家向け広報 ※8)情報をデータとして読み込み、変化のある銘柄をピックアップするシステムを独自に開発、活用しています。
AIのデータ分析の利点を捉えた良い使い方ですね。
企業訪問もされているとありますが、企業訪問する優先度はやはり割安かどうかでしょうか?
そうですね。まず、ROEとPBRの関係性を見て、割安だと判断した銘柄の中から変化していると思う企業を選んで企業訪問しています。
なるほど。企業訪問で意識していることは?
企業訪問では、経営陣に将来のビジョンを伺い、本当に変化しようとしているのかを確認します。
投資するにあたって、自信を持つためには、経営陣に直接お会いしてお話を伺うことが重要だと考えています。
3. インフォメーション・レシオに注目 – 長期的な視点での運用パフォーマンス
変化をする企業に投資という側面から、1社あたりの投資期間はどのくらいを想定されていますか?
期間は決めていません。期間を決めてしまうと、企業が変化をしている途中で売却せざるを得ない状況になってしまう可能性があります。
例えば、短期的には相場環境の影響を大きく受けることがあります。
具体的には為替や金利など、市場全体に影響を与える要因によって、ROEが一時的に悪化してしまうこともあるでしょう。
しかし、長期的に見てROEが向上していくと判断できれば、保有を継続します。
バリュー株への投資と聞くと株価変動が激しいイメージがありますが。
値動きの大きさについては、アクティブ運用のファンドなのでTOPIXとは銘柄数が違います。
そのため、短期的にみるとTOPIXより価格変動が激しい場面もあるかもしれません。
「黒潮」のアピールポイントとしては、長期運用でのインフォメーション・レシオ (※9)が高いことが挙げられます。
インフォメーション・レシオは、ベンチマーク(ここではTOPIX配当込み)に対する超過収益をリスクで割ったものです。
インフォメーション・レシオですか。
ファンドの実力を示す指標としてはシャープレシオ(※10)がありますよね?
シャープレシオはリスクに対するリターンの効率性を見る指標ですが、インフォメーション・レシオはベンチマークに対する超過収益を見る指標です。
ベンチマークがあるファンドでは、インフォメーション・レシオの方が重要視される傾向にあります。
なるほど。インフォメーション・レシオが高い方が、ベンチマークに対して効率的にリターンを出せているということですね。
その通りです。例えば、TOPIXと比べてリターンが高く、かつリスクが同程度であればインフォメーション・レシオも高くなり、効率的な運用が行われていることがわかります。
ありがとうございます。
4. 日本はバリュー株の宝庫 – 企業が今、変わってきている
日本のマーケットは、バリュー株投資の観点からどのようにお考えですか?
日本はバリュー株の宝庫だと考えています。
バブル崩壊後、日本企業は厳しい経営環境に置かれ、財務等の安全性を重視するあまり、ROE向上への意識が低かったと言えます。
しかし、近年は、ROEの重要性に気づく企業が増えてきています。
特に現在のインフレ環境下では、ROEを向上させやすくなっています。値上げを行いやすいため、利益も伸ばしやすくなっているといえます。
確かに、インフレは企業にとって追い風になる側面もありますね。
追い風になっている部分はあると思いますし、東京証券取引所が実質的に低PBRの企業に対し改善を要請したことなどもあり、日本企業の変化は加速すると考えています。
個人的には日本企業はまだまだ変化する余地があると考えています。
5. 投資家の皆さまへ – 変化する企業を投資で応援する。
これから投資される方に向けて一言お願いします。
過去の経験から見て、今後の日本の株式市場に対して悲観的な方もいらっしゃると思います。しかし、変化しようと努力している良い企業はたくさんあります。
私たちのファンドも変化している企業を投資で応援したいと思っています。
このような考えに共感していただけるなら、ぜひ当ファンドに投資をしていただきたいと思っています。
また、当ファンドのようなアクティブ運用のファンドに、もう少し関心を持っていただきたいと思っています。
現在、多種多様なアクティブ運用のファンドが存在します。
私たちの場合はバリュー株に特化していますが、他にも様々な特徴をもったファンドがあります。
このような多種多様なファンドを組み合わせることで様々なリスク・リターンをもつポートフォリオを作ることができます。
アクティブ運用のファンドは、投資家の皆さまの様々なニーズに応えられるものだと思っていますので、うまく活用して自分に適した資産運用をしていただきたいと強く思っています。
本日は、ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
後書き
バリュー株投資というと一般的にはPBRやPERなどの数値そのものを判断基準に考えることが多い印象でしたが、ROEに対するPBRの比率を判断軸にしているという点に、「こだわりのバリュー株運用」の意味を感じました。
合理的な運用アプローチだと感じ、当ファンドの信頼感につながりました。
部奈さんが、「黒潮」のファンドマネージャーに就任したのが2015年10月だそうです。
当ファンド自体は1999年から運用されているファンドですが、部奈さんが就任されて以降も、引き続き運用パフォーマンスは良好に推移しています。これは部奈さんの運用に対する取組みが、良い運用成績につながっていると考えられます。
今後とも部奈さんと三井住友DS日本バリュー株ファンド(愛称:黒潮)の今後を見守っていきたいと思います。
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